こんにちは、院長の酒向です。
MFT(口腔筋機能療法)についての最後の記事です。ぜひご覧ください。
どうして普段の癖が歯並びを悪くするの?
口腔周囲の筋肉の不調和は、不正咬合の原因となることがあります。
とくに、指しゃぶり、口呼吸、低位舌、舌突出癖、といった口腔習癖は歯列に大きな影響を与えることが知られています。
これは、歯列が舌や口腔周囲筋の調和がとれた場所に位置する性質を持つからです。
口腔筋機能異常の主な原因 |
◆ 指しゃぶり |
◆ 巨大舌/舌小帯付着異常 |
◆ 外傷やむし歯による乳歯の早期喪失、永久歯の先天欠如 |
◆ アレルギー性鼻炎、アデノイドや口蓋扁桃肥大などの鼻咽腔疾 |
◆ 口腔周囲筋の筋力低下 |
どんな影響があるの?
口腔筋機能異常の影響
・食べ物を飲み込みにくい
・顔面の筋肉を過緊張させて飲み込む
・不明瞭な発音
・口唇閉鎖不全
・口呼吸
・口腔内の乾燥による歯肉炎・着色
・床矯正装置を舌で押して外れやすくなります。
・口もとの前方突出
など、歯列不正以外にも様々な影響を及ぼします。
正しい安静時の状態
○ 舌尖がスポットについている
(スポットとは、口蓋の切歯乳頭後方部のことを指します。)
○ 口唇は軽い力で閉じている
○ 上下の歯の間は数㎜あいている
○ 鼻で呼吸している
誤った舌位による影響の一例
開咬(かいこう)
安静時に舌が上下の歯間にあるため、歯の萌出が妨げられています。
正しい嚥下(飲み込み)
○ 舌尖がスポットについている
○ 嚥下時に臼歯をかみしめる
○ 舌後方部が挙上し軟口蓋と接する
○ 口唇・顔・全身をリラックスして飲み込む
誤った嚥下(飲み込み)
× 舌を挙上させず前方/側方に突出させて嚥下する
× 嚥下時に臼歯をかみしめない(=咀嚼筋の緊張がない)
× 舌後方部・軟口蓋・咽頭部の動きが悪い
× 口腔周囲筋を緊張させて飲み込む
誤った嚥下による影響力の一例
空隙歯列(くうげきしれつ)
嚥下時に舌を前方突出させるため、歯と歯の間に広がっています。
お口の癖を治すにはどうしたらいいの?
お口の周りのバランスを整えるトレーニング(MFT)で改善することができます。 ただし、長年にわたってついた癖は、早くても半年、状態によっては2~3年以上かかることがあります。
トレーニングの目的
①お口周りの筋肉の力を強くする。
② リラックス時の正しい舌や唇の位置を覚える
③ 正しい飲み込み方を覚える。
トレーニング内容
その① スポット
姿勢を良くして、鏡を見ながら1)と2)を交互に5~10回行います。
1)口を大きく開け、スティックをスポットに軽く押し当て、5つ数える。
2)スティックをはずし、舌尖をスポットにつけ、5つ数える。
その② ティップ
1)スティックを口の前に垂直に持つ
2)舌を前方に出し舌尖をとがらせ、舌とスティックの両方で3秒間押し合う。
3)スティックを離し、力を抜いて口唇を閉じて休む。5~10回繰り返す。
その③ ポッピング
1)舌尖をスポットにつけ、舌全体を口蓋に吸い上げる。
2)口を大きく開け、舌小帯をできるだけ伸ばす。
3)舌で口蓋をはじくようにし、ポンと音を立てる。10~15回繰り返す。
その④ カッスワロー
1)口を大きく開け、人差し指を舌前方にあて、下顎前歯とともに軽く押さえる。
2)“カッ”と言って、舌後方部が持ち上がる状態を鏡で見る。
3)スプレーの水を口蓋にあてるように注水し、2と同じような動きで、口を大きく開けたまま飲み込む。
4)指を外し、もう一度注水し、舌尖をスポットにつけ、「イー」と言って口唇を開けたまま飲み込む。5~10回繰り返す。
上記以外にも数十種類のトレーニングがあり、患者さんの状態に合わせて、歯科医院でトレーニング内容を決めていきます。
治療の流れ
① お口周りの筋肉の状態を検査します。(矯正治療の検査・診断の後に行います。)
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② 治療計画をご説明します。
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③ 段階的に進むトレーニングを順に練習していきます。
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④ ご自宅で、毎日練習します。
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⑤ 課題ができたら、次のトレーニングに進み、②~③を繰り返し実践する
※ご来院は月1回のペースです。
まとめ
口腔筋機能療法(MFT)は、 食べる(咀嚼)、飲む(嚥下)、発音、呼吸、舌の位置、 口唇の位置などの改善を目的とした各種トレーニングを行うことにより、 口腔周囲の筋肉バランスを整える療法です。当院では、矯正治療のスムーズな進行および矯正治療終了後も長期の安定的な保定を実現させることを目的として、 この療法を積極的に取り入れています。ご質問がありましたらいつでもお気兼ねなくお声がけください。